底流、暗流の意
珈琲好きとしては、これを題材や小道具に使っている作品を見ると、無性に応援したくなるものだ。たとえ扱っている題材が缶コーヒーだったとしてもだ。
前の写真は「ITAMI COFFEE」のエチオピアのモカ。
(たぶんハラーかイルガチェフェだろう)
オーガニックでフェアトレードだそうだ。
エチオピアのフェアトレードというと、2008年劇場公開された
「おいしいコーヒーの真実」というドキュメンタリーを思い出す。
我々が飲むトールサイズのコーヒーは300数十円。この一杯のコーヒーの値段のうち、コーヒー農家が手にする豆代は一体いくらか。
実は3円にも満たないのだという。有名チェーン店は農園の豆をまとめ買いし、買いたたく。
スイスに本拠地をおく世界的に有名な食品メーカーなどの数社は、世界中のコーヒー市場を支配し、価格を操作し、利益をあげる。
価格の安定化を図ってきた国際コーヒー協定が1989年に破綻して以来、現地のコーヒー豆の価格は大暴落してそのまま。
いやなら買わないよ。
市場の支配者からそういわれた農民は言い値で売らざるを得ないわけだ。
売り上げが上がらず、農園の維持が困難になり、
またはそうならないために、不愉快な人工肥料の大量投与で新しい品種の大量栽培を行う。
コーヒーの木には原種に近いアラビカ種と、交配から作られたロブスタ種があり、
アラビカ種は非常に神経質で弱く、育てにくい。
それに対してロブスタ種は強い品種で大量に収穫できる。
育てやすく、収穫量が多いとなれば、そちらになびくのが世の常。
言い方は悪いが、手を抜いてもたくさん実を付ける新しい品種を、ぎゅうぎゅう詰めに植え、育てる。
ストレートの豆の銘柄に注意してみよう。
例えば、エチオピアには地域がある。
マタリ、ハラー、イルガチェフェ、シダモ、リム、などだ。
それぞれの地域に農協があり、協同組合を構成している。
したがって、基本的なストレートの銘柄は
国の名前、地域の名前、農協の名前、農園の名前という感じで名付けられる。
これはあくまで個々で売買できる品質の場合。
規定に満たなければ、農協で全部混ぜられ、加工用に流通される。
ロブスタ種はカフェイン含有量が多く、香り(アロマ)がまったく落ちる。
濃く感じさせようとすれば、ロブスタ種が良いが、どの産地の物も同じ味になっていく。
アラビカ種は取れる地域、土地、日の当たり方、干し方それぞれで全く異なる味、香りを持つ。これはワインの世界と同じだ。
ロブスタ種しか栽培しなければ、コーヒー豆の香りは落ちていき、どの農園も同じような味になっていく。
そうして、世界中のコーヒーの味は平衡状態になりつつあった。
20年くらいまえあたりから10年間くらい、マメはどんどんその味を落としていった。
金融商品として取り扱われるようになってさらに問題は悪化する。
中米の銘柄の多くは、NY市場の価格で大きく揺さぶられた。
金融商品として上がったり下がったりする底辺の価格のさらに数十分の1の売り上げで、農家はかかった費用分もまかなえない。
そしてとことん貧困にあえぐことになるのだ。
そうして、コーヒーの栽培を止め、麻薬を栽培することになる。
そのほうが稼げるからだ。しかも、その稼ぎは、子供を学校に通わせることもままならないほどの物で、最低限の生活すら保証されない。
この負のスパイラルからの脱却に、現地や、その支援者はコーヒー農協連合会を作り、フェアトレードの流通形態を作り上げる。
コーヒー豆はその流通過程で6度の中間マージンがかかる。
このマージンでも、しかし我々消費者にとどく価格にそれほど変化はない。
インフレ、物価高騰のつけは、生産者に覆い被さっていくのだ。
おいしいコーヒーの真実はこの部分の光と影も映し出す。
クラフト、ネスレ、P&G、サラ・リー、スターバックス
は、このドキュメントの取材には応じなかったという。
いずれも、コーヒー豆の市場価格を牛耳る国際的な食品メーカーやコングラマリットだ。
フェアトレードに敵対する大企業。搾取する側の論理。
画面に映る文字は
「make coffee not war」
(戦争ではなく、コーヒーを作ろう。)
世界はまだ広く、我々が知らないことはまだ多すぎる。
というか、
我々は世界で起っているはずの、
自分に多少なりとも関係あることも、
実はそのほとんどが見えていない状態なのかもしれない。
目は見るために、
頭は考えるために、
心は感じるためにある。
